2016年4月10日日曜日

はじめに若干の所感


 410日、1学期最初の授業日の朝、池袋駅でリクルートスーツの若い人たちが大勢集まっているのを見た。入社式か、新人研修かであろう。私もまだまだ若いつもりでいるが、あの中に混じったらさすがにちょっと浮くだろうな……と考えた。
 私は昭和の終わり近くの生まれで、塾・予備校業界でも研究の世界でもまだまだ若造にすぎない。この業界に限ったことではない。たぶん30過ぎでおじいちゃん扱いされる業界は野球界と相撲界くらいであろう。日本社会では30代はまだ子どもに毛が生えた程度の年齢でしかない。……と思っていたが、お笑いの森三中の人が男装して主演をやっている映画のキャッチコピーに「32才の中年男!」と書いてあるのを見て、暗澹たる気持ちになったことがある。この映画が出たころ、32才は中年じゃねーだろー、と憤慨したものだが、ネット上のレビューなどを見てもこの点に突っ込んでいる人がほとんどいないのははなはだ不審である。実にけしからんことである。まあそんなことはどうでもよくて、現役や1・2浪の受験生の皆さんからみたら、私でもまぎれもなくおじさんなのだろう。芸大には社会人入試の制度がないので、けっこう実社会で経験を積んだ人が現役生に混じって入学してくることがある。数年前に、さる有名国立大学の教授がご退官後に芸大の学部入試を受け、見事合格されたことは新聞でも報道された。私たちの予備校にも、相当の社会経験を積まれた方が相談に見えられることもある。それについては何も申し上げることはない。日本語には、目上の人をほめるための適切な語彙がない。「立派だ」「えらい」全部上からの物言いになってしまう。これは、ほめるにせよけなすにせよ、目上の人を「評する」ということ自体が不遜であると考えられてきたからだと思う。だから私などは、たんなる受験屋として、勉強のノウハウをお伝えするだけが精一杯なのだ。これは相手が若い学生さんであっても同じことで、30年やそこら生きただけの私が、乏しい人生経験をもとに経験則的なアドバイスをしたところで、あまり役に立つとは思えない。それでも、私は若い方たちに、「今の時間を大切にしてください。気を抜くとあっというまに私のようなおじさんになるよ」ということを本当にお伝えしたい。学問や研究の世界でも、年齢を重ねるにつれてチャレンジの可能な幅はどんどん狭くなる。体力的にも無理がきかなくなる。だから今のんびりしている暇はない。これは多分に自戒も含んでいるのだが、ちょっとくらい無理をしてもなんということはない。この一年、ちょっと無理してみようではないか。案外いけるのではなかろうか。
(宗)

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